THE FUTUREHEADS 2011 UK超マイナー夏フェス巡り(番外編)

 
 
 
  
MUCH ADO ABOUT NOTHING  (DAVID TENNANT & CATHERINE TATE)
20/JULY/2011(WED)    

今回のUK旅行の最終日はシェークスピア喜劇を観てきました!
シェークスピアといっても、グローブ座でエリザベス・カラーにちょうちんブルマをはいた人たちを観ていた訳ではありません。
今回観た「MUCH ADO ABOUT NOTHING(邦題:空騒ぎ)」は、主演がイギリスの人気男優デヴィッド・テナント(DAVID TENNANT)!そしてイギリスの大人気女性コメディアン、キャサリン・テイト(CATHERINE TATE)が共演する現代劇です。

主演のデヴィッド・テナントはイギリスの超人気SFドラマ「ドクター・フー(DOCTOR WHO) 」の主役として、ここ数年のあらゆるドラマの賞を総なめにしてきた俳優です(でも元々シェークスピア・カンパニー出身の実力派ですよ)そして共演のキャサリン・テイトもこのドラマのシーズン4で、彼の相棒役としてレギュラー出演しています。

この2人が舞台で久々の共演となれば話題にならない訳がない!そんな訳で当然チケットは全公演ソールド・アウト!で、私といえばそんな舞台をやっていること自体を知らなかったので、当然チケットなんてありません(苦笑)

偶然に劇場の前を通りかかって看板を見つけ、焦りまくりのアタフタ状態。
「あの〜・・・ソールド・アウトですよね?」とダメ元で劇場のチケット窓口で聞いてみると、
「そうだよ。全公演ソールド・アウト!」と「当然のコト聞くなよ」と言わんばかりの係員。

ですよねぇ〜・・でも昨年、彼が主演をつとめた「ハムレット」の時に劇場に問い合わせると、当日の朝にキャンセル・チケットを再販すると教えてくれたんだよな(結局はその日にフューチャーヘッズのライブに行ってしまったけど。)

「チケットのRE-SALEはやらないんですか?」
すると自分の手元の仕事に戻っていた係員が少しだけ笑顔になり、
「DAY TICKET(当日券)は当日の朝10時にここで販売するよ。」

おおっ、やっぱり当日販売があるんだ。聞いてみてよかったぁ・・・でも演劇の世界に関しては全然知らないから、何時から並べばいいのか見当もつかない(涙)ま、ダメ元でやってみましょう。

当日の朝8時、「ちょっと遅かったかな?」とドキドキしながら劇場に到着すると、あれっ!?誰もいない・・・。入口で待てばいいと掃除していた男性が教えてくれましたが、誰も並んでいないとこれまた逆にドキドキ(苦笑)

とりあえずしばらくそこに立っていると、
「君はDAY TICKETのために並んでいるの?」
と、トレンチコートを着た初老のアメリカ人のおじさんに声をかけられました。
そうです!そうです!
「そうか、じゃあ君の後ろに並ぼうかな。」とニッコリ。

このアメリカ人のおじさん。なんと年に3回も舞台を観るためだけにテキサスからロンドンにやってくるような演劇マニアだったのです。
でもアメリカならニューヨークがあるんじゃないの??
「以前はニューヨークに行っていたよ。でもロンドンの方がマチネ(昼公演)が多いから同じ滞在日数でもたくさんの舞台が見られるんだ。」
うひ〜っ、すごい(汗)でもどうやら、それ以上にイギリスが好きなおじさんみたい。
「私はあまり演劇は観たことがなくて・・・デビッド・テナントも『ドクター・フー』しか知らなんです・・・」
「そうなの!?じゃあ昨夜の『TORCHWOOD』の新シリーズは観た!?面白かったよね〜」
なんて、バカにするどころかノッてくるおじさん(笑)(「TORCHWOOD(トーチウッド)」は「ドクター・フー」のスピン・オフ・ドラマなのです。)

おじさんは「ドクター・フー」からアガサ・クリスティものまで、イギリスのTVドラマのDVDをわざわざイギリスのAmazonから取り寄せて見ているんだって。


2階建てバスの窓からこの看板を見つけアタフタ

そんな感じで演劇だけじゃなくドラマから映画「英国王のスピーチ」まで、色んなお話しをしている内に気がつけば後ろには30人くらいの行列が。
ドクターの大ファンだという孫を連れてロンドンまで来たというおばさんや、演劇大好きなオバちゃん達、これまたアメリカ人の夫婦など、マニアおじさんが後ろの人達に次々と声をかけ、和気あいあいと時間が過ぎていきました。

「今日のチケットはLOTTERY TICKETだから、当たるといいね!」
ロッタリー(宝くじ)チケット??なに、それ??

実はこの舞台の当日券はくじ引き販売だったのです!
当選すれば10ポンド(1400円程度)でチケットが購入できます。
「外れたら残っているチケットを正規の値段で買えばいいんだ。でもロッタリーのチケットは会員用の良い席で10ポンドだからね。当たるといいよね。」
と笑顔のおじさん。でもそれじゃあ並ぶ意味ないじゃ〜ん?!しかも販売は1人1枚のみ。つまりホテルでまだ寝ているダンナのチケットは買えないってコト?え〜っ、面倒くさいなぁ〜。ブーブー!

そうこうしてるとバケツを持ったオジさんが登場!並び順に番号フダを配られ、
「さあ!くじ引きをやるぞっ!」
ビンゴの様にオジさんがバケツからボールを引き、番号を読み上げる度に大騒ぎ。
そうか、通りの人達にこの騒ぎを見せて宣伝効果を狙っているんだ!と、上手いやり方に感心しつつ、すでにソールド・アウトなんだから、そんな話題作りしなくてもいいじゃないの(苦笑)

しかもこのやり方は買う側にとってはやっぱり大変。
2人連れは両方が当選してからでないと並びでチケットが買えないし、孫を連れたおばさんは自分だけが先に当選してしまいオロオロ。孫の分だといっても2枚は売ってくれません。
・・・・が、結局は列に並んでいた10番目ぐらいまでは皆チケットが当たっていました。何かそれなりの配慮はしているみたいです(笑)なので、おばさんも無事に孫と一緒にチケットを購入できました。
そして私も隅っこですが3列目のチケットを10ポンドで購入。テキサスおじさんもゲットして
「あなたとお話できて楽しかったよ。よい夜を。」
こちらこそ演劇の世界の話が聞けて楽しかったです〜。よい夜を。

で、また列に並び直し、ダンナのチケットを買おうとしたのですが
「残っているのは60ポンド(8400円程度)のチケットと、16ポンド(2200円程度)の立ち席です。」
高けえっ!!60ポンド!?いや、舞台ならそれぐらいの値段が普通なのですが・・・そうか〜3列目が10ポンドで買えるなんて破格なんだ。ロッタリー・チケットが当選していて良かったぁ。けっこう良い販売方法だよなぁ(さっきまで文句タラタラだったのに)
夫婦別々でそんな金額(もしくは立ち見)というのもなんだかもったいないので、ダンナには旅行最後の夜は一人で自由行動してもらうことにしましょう(笑)

(ちなみに、おじさんの話によると、ほとんどの舞台のチケットを朝に並んで買っているそうです。曜日によっては並ぶ人が多いけど、DAY TICKETが買えなかったことはないそうです。もしロンドンで見たい舞台がソールド・アウトだったら、ぜひトライしてみて!)

そして夜7時からの開演に向け、再び劇場へ。劇場のWYNDHAM’S THEATREは地下鉄レスター・スクエア駅(LEICESTER SQUARE)の真上。ウエスト・エンド(WEST END)と呼ばれるこの辺りはロンドンでも劇場が集まるエンターテイメントの中心地です。

しかしチケットを買ってから気付いたのですが
「あれ?もしかして観劇だから正装しなきゃいけないのっ!?」
と、アタフタしたところで今更ドレスなんてある訳ないので、とりあえずブルー・ジーンズ以外のパンツにシャツ姿で出かけました。
「朝に一緒に並んでいたおばちゃん達もTシャツにジャージだったしね。」
劇場に着くと、皆さんもカジュアル過ぎない程度のファッションだったので良かった、と思っていたら、隣の席が朝に一緒に並んでいたおばちゃん達。わっ!しっかりドレス・アップしてるっ!朝はジャージ姿だったくせに〜(笑)演劇好きな人達はちゃんと用意しているのね。

で、おばちゃんたちと軽く挨拶して着席しました。皆はワインなどのアルコールを片手に席についていましたが、さすがにシェークスピアで英語が分からないからといって眠ってしまったらマズイので私はコーラにしときました(苦笑)

さて、今回の舞台「MUCH ADO ABOUT NOTHING」はシェークスピアの喜劇を現代風にアレンジし直したバージョン。

で、ストーリは4人の男女を中心に、叔父の悪巧みによって結婚式当日に最悪の破局を迎えてしまったクローディオとヒーロー。それを見た新郎の友人ベアトリスと新婦のいとこベネディクト。いつもは反発しあってた2人なのに真相解明のために協力しているうちに・・・と、1組のカップルは愛憎入り交じってシリアスに、1組は自惚れやら腹の探り合いやらでコミカルにと、対照的な恋愛模様が上手く絡み合った喜劇でした。
オーソドックスだけどシェークスピアってけっこう面白いんですねぇ!

といっても、こんなストーリーを追うのが精一杯でしたけど。いくら現代劇になっているとはいえ、確かにシェークスピア劇の言い回しは難しいです。当然、同時通訳のイヤホンなんて無いですし(苦笑)

でもデビッド・テナント演じるベアトリスや、キャサリン・テイト演じるベネディクトが登場すると場内は大歓声(シェークスピア劇であんなに盛り上がるなんて〜)
ヒーローの父親の作戦に見事にハマって、お互いに「彼女(彼)は俺(私)にホレている」と思い込んでる2人のチグハグなやりとりなんて息ピッタリで、「ドクター・フー」での軽妙な掛け合いを思い出すなぁ〜。
テナントさんのちょっと大げさな演技が、軽い男のベアトリスのキャラに良く合っているし。

そしてテナントさんの黒パンツ丸見えのミニスカ&網タイツ姿なんて衝撃的シーンや(仮装パーティで女装してたんです)、キャサリンの体を張ったワイヤーアクション(?)、そして最後には2人の生チュー(笑)などなど、シェークスピア劇とは思えないような笑える演出が満載。
そして最後は全員のダンスによる大円団。テナントさん、手足長っ!(笑)

無論、カーテンコールはスタンディング・オベーションでした。

いや〜観る前は「シェークスピアなんて分かるかなぁ」なんて心配してましたが、充分楽しめました。しかも3列目ですから、テレビでしか見た事が無かったテナントさんがほんの2、3メートル先に・・・えっへっへ〜(ごめんね、アホで。)

さてさて、外に出るとちょうどあちこちの劇場がハネた時間。レスター・スクエアの駅も地下鉄もまるで朝のラッシュのように大混雑。普段は夜に出かけてもこの辺りとは縁がないので忘れていましたが、やっぱりロンドンってエンターテイメントの都市なんですねぇ。わざわざテキサスから来る訳ですね。


ちなみにテナントさんの故郷エジンバラの自然博物館でこんな看板を見つけました。
テナントさんがナレーションの科学フィルムを上映していたみたい。